躁鬱の完治は諦めてます。

躁鬱歴15年&HSP。幸せを感じるのって難しい。

ヨーロッパでの飲食店アルバイト⑨ 〜思い込みが激しい乙女な40代男性シェフ〜

 

彼が元気になると、別の意味で問題があった。

 

というのは、めんどくさい恋する乙女のようだったからだ。

 

ある時は私に対して気持ちがあるかのように匂わせ、またある時は私の日本人の友人に対して好意があるようなことを言い、さらにまた別の日は韓国人の同僚が好きだと言いだす。

 

「はあ?何言ってるんだこの人?女の子なら誰でもいいのかな?」と思いながらも、彼はうつ病で繊細なところもあるので、傷つけるようなことは言えない。

 

私は彼のお気に入りだったことを知っていたので、変に気を持たせてはいけないと思い、彼と少し距離を置くようになっていた。

 

クリスマスパーティの時に同僚と写真を撮っていたのだが、それを見た彼が「何で俺と写真撮ってくれないの?俺のこと嫌いなんだね。」と周りに人にも聞こえるような声でグチグチ言い出した。

 

仕方なく2ショット写真を撮ると、彼は満面の笑みを浮かべ満足したようだった。

 

こんなことや長文の重い内容のメールのめんどくささに耐えられずに、私が日本へ帰国した後は彼と連絡を取るのをやめた。

 

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その後日本人の友人に聞いた話なのだが、彼は「韓国人の同僚と付き合うことになった。」と友人に話していたらしい。

 

私はその子とずっと一緒にウエイトレスとして働いていたので、よく知っていた。

 

私「えー!?ちょっと待って。韓国人の子は英語話せたけど、彼は英語を話せなかったよね?2人ともまともに会話できてなかったのに、どうやって会話してるの?」

 

友人「翻訳アプリで会話しているらしいよ。シェフが彼女の誕生日プレゼントで高価なアクセサリーあげてた。でもそれからすぐその子のビザが切れて韓国に帰って遠距離になってしまったから、彼は結婚することを考えたんだって。最近彼は転職して現在マレーシアにいるんだけど、職場の人にいずれ婚約者が来て同棲する予定と伝えてたみたい。そして同棲する段取りを組んで彼女にマレーシア行きの航空券を送ろうとしたら、連絡取れなくなって自然消滅したらしい。」

 

韓国人の子のために言っておくがその子は本当に優しい良い子で、その気があるフリをして高価なプレゼントを買わせて高飛びするような腹黒い子ではない。

 

 

 

私と友人の解釈はこうだ。

 

韓国人の子はみんなに対してとても優しい子だったので、シェフが両想いなのではないかと勘違いしてしまった。

 

シェフは彼女のことが一方的に好きで、メールをしたり誕生日プレゼントをあげた。

 

でもその子はシェフと友人の1人としてしか見ていなかった。

 

お互い簡単な会話をすることしかできず翻訳アプリに頼ったが、たまに訳し方が変だったりするので、実はうまく意思疎通ができてなかった。

 

それでなぜかシェフの気持ちが盛り上がって、自分達は付き合ってるし婚約もしたと思った。

 

 

 

さすがに優しさの塊のような子も付き合いきれなくなって、音信不通になったと言ったところだろう。

 

私と友人は2人のことをよく知っていたので、このストーリーが一番しっくりくる。

 

どうしたらそんな都合のいい解釈ができるのか不思議だ。

 

思い込みが激しいにもほどがある。

 

彼が以前にうつ病と診断されたことがあると聞いていたので、鬱が辛くて恋愛依存をしているのかもしれないと思った。

 

私の経験上、一時的に恋愛が幸福感を与えてくれるが、それがうまくいかないと他にも大きなダメージを受ける。

 

 

私は力になることはできなかったが、彼がちゃんと治療やカウンセリングを受けて、この恋愛に対するアグレッシブさやポジティブさを別のところにも向けるようになって欲しいと願う。 

 

宮本亞門にカウンセラーになって、元気を分けてほしい

4月頃、ふとFacebookを見ていたら、Climbers(クライマーズ)というオンラインイベントの告知を見つけた。

 

出演者は西野亮廣本田圭佑小泉進次郎、、スポーツ選手、有名企業の社長達など。

 

各業界のトップランナーが、難局をどう乗り越えた来たのかを語る内容となっている。

 

2021online.climbers-evt.com

 

3日間かけて行われ、バラエティに富んだ講師陣の話を無料で聞くことができると言うのだから、ぜひ参加したいと思った。

 

無料で参加可能なのだが、事前にメールアドレスなどの登録が必要だった。

 

広告として見つけたイベントだったので、最近フィッシング詐欺などもあるから登録に少し不安な部分もあったが、前年も開催されたちゃんとしているイベントだったから良かった(笑)。

 

 

 

5月21日、イベントがスタート。

 

いろんな業界の人のトップを行く人々の話はどれも面白い。

 

彼らは努力家だしエネルギッシュだし、生き生きと輝いている。

 

中には58歳でパソコンを初めて、アプリ開発をした86歳の女性の講師もいた。

 

素直にすごい人たちがいるもんだなと感心した。

 

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そこで一番心を掴まれたのは、宮本亞門の講演だった。

 

彼は表情豊かで、体を大きく動かし、ずっと聞いていても全く飽きない饒舌なトークだった。

 

たった40分だったのだが、正直に言ってもっと聞きたくなるような、エンターテイメントショーのようだった。

 

始めは彼の生い立ちなどを話していたのだが、途中で彼は笑顔で視聴者に問いかけた。

 

「人生楽しんでいますか?」

 

どきっとした。

 

人生楽しいと思うことはほとんどない。

 

しかも最近は鬱で毎日暗い気持ちでいっぱいで押しつぶされそうになっている。

 

「僕は、全員に価値があると思っているんですよ。」

 

何の疑いもなしに力強く言った。

 

自己肯定感がない私からしたら、その言葉を言えるのはすごいと思った。

 

「いろんな人がいていい。違っていい。」

 

なんだか、鬱でまともに仕事もできない私でもここにいてもいいのかな、と考えてじーんとしてしまう。

 

彼は数年前に癌を患ったことも話した。

 

なんだかちょっと悲しくなるような話なのかなと思ったが、違った。

 

「死のことを想ったんです。そしたら生きていることをさらに実感したんです。人生を無駄にしたくない。」

 

彼は笑顔で語り、今生きていることを心から幸せだと感じでいるようだった。

 

私なんて無駄だと思うことばかりなのに。

 

彼のこの底抜けに明るい性格が羨ましい。

 

そして彼の好きな名言を紹介してくれました。

 

”人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ”

 

これはチャップリンの言葉だそうです。

 

今は辛いと思うかもしれないが、広い目で見れば大した問題ではない。

 

だから人生を無駄にせず楽しく生きよう。

 

なんだか気持ちが少しスッキリしたような感じがした。

 

 

 

最近不調が続き、新しくカウンセリングに通おうかと考えているところなのだが、もし彼がカウンセラーだったら、毎週のように通って勇気付けて励ましてほしいと思った。

 

あの全身から出るエネルギー、ユニークさ、生き生きしている姿を見ただけでもかなり元気を分けてもらえた。

 

過去の動画配信をしているかわからないが、是非見て欲しいと思う。

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト⑧ 〜40代男性シェフの鬱告白〜

 

 

職場で怒りっぽいマネージャーに悩んでいたが、私にはもうひとつ悩みの種があった。

 

日本人40代男性シェフのことだ。

 

彼は海外の日本食レストランで長く働き経験も豊富で、他のキッチンスタッフに指導もする立場であった。

 

みんなに対してフレンドリーで、差し入れを買ってきてくれたり、面白い話を聞かせてくれたりするような優しい人だ。

 

シェフ「何かあれば頼ってよ。君たちは家族みたいなもんだし、俺が助けてやる。」

 

と言うのが彼の口癖だった。

 

彼には何でも話せたし、信頼のできる人だと思った。

 

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この店がオープンしたばかりでやらなければいけないことが多く、マネージャーのせいで人も足らず、彼や上の立場のシェフ達はいつも長時間労働をしていた。

 

その疲れが出たのか、ある日彼は倒れて病院に運ばれた。

 

しばらくの間働くことを医者に止められていたのだが、2日ほど経って彼は職場に復帰した。

 

シェフ「俺がいないと店が回らないだろう。」

 

と言って責任感のある彼は医者の言うことを聞かず、無理矢理にでも働いた。

 

ここ頃になってから、彼のイメージが少しずつ変わっていく。

 

 

 

私もそうなのだが、人間体が疲れてきて無理をすると、メンタルも弱りだす

 

今まで彼がみんなを気にかけて「どうした?悩みがあるのか?話なら聞くぞ。」と声をかけたり元気付けていたのだが、立場が逆転しだした。

 

毎日のように彼が、同僚ほぼ全員に対しての不満を言うようになった。

 

からしたら何の文句もないような人まで「あいつはな・・・。」と批判をしだす。

 

初めは尊敬と忠誠心を示していた社長のことまで話しは広がっていった。

 

やがて彼は不満や愚痴をメールで送って来るようになった。

 

しかも長文。

 

私だけではなく、他の日本人の同僚に対しても似たようなメールを送っていた。

 

そしていろんな話を聞くうちに、うつ病だとカミングアウトをされる。

 

以前にうつ病と診断されていたが、薬は飲んでいないようだった。

 

最初は体も悪くしていたので、少しでも支えたいと思い、話し相手になった。

 

私だって誰かに話を聞いてもらいたい時はあるので、気持ちはわかる。

 

だが送られて来るメールの内容は重くて、簡単に返信できるものではなかった

 

彼は何度も「死にたい。」とか「俺なんて死んだっていいんだ、家族もいないし。」などと口にしていたこともあり、言葉を選んで、何度も考えて、時間をかけて返信をした

 

そんなことが続くと相手の感情が自分にも伝わり、だんだん私まで病んだ気持ちになってくる

 

助けたい気持ちはあるのだが、負担が大きかった。

 

次第に終わりが見えない暗い話題に返信することが億劫になってくる。

 

 

 

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト⑦ 〜我慢の限界と涙の訴え〜

 

ある日、マネージャーは朝から何かに対して不満を持っていたのか不機嫌そうだった。

 

そんな雰囲気を察して、私もピリピリしてくる。

 

そして開店準備も終わり営業前の朝礼が始まった。

 

スタッフ全員が半円を描いて並び、その半円の真ん中にマネージャーが立って話を始めた。

 

前日の売り上げの話や、反省点について伝えるのだが、そこでウエイトレスたちに対して怒った。

 

開店準備をしている時点から嫌な予感はしていたのだが、ついに今まで我慢していたものが崩壊した。

 

涙が溢れて止まらない

 

それがみんなの前で泣いてしまったので、もう涙を隠すことはできない。

 

この際なので言ってしまおう。

 

私「なんでそんなにいつも怒る必要があるの?私たちはそんなに大きな失敗をしてるわけじゃないじゃん!」

 

私は泣くと話せなくなってしまうのだが、この人にはちゃんと言わないと伝わらないと思い、泣きながらも今思っていることを伝えた。

 

すると彼の第一声。

 

マネ「なんで君はそんなに泣いているんだ!子供じゃないんだから!」

 

私だって泣きたくて泣いてるんじゃない

 

この人には何言ってもダメだと感じた。

 

彼が私が躁鬱病だとはもちろん知らなかったが、スタッフが泣いて訴えているのにそれを聞こうともせず、怒り返すってどうなのだろう。

 

泣くほど不満を持ったまま、今まで耐えて働いてきたということがわからないのだろうか。

 

「そうか、ちょっと怒ってばっかりだったかもしれないね。ごめんね。」というような、私が期待するような答えが返ってくるはずもなかった。

 

マネ「仕事なんだから怒ることはあるよ。でも私はこんな性格なんだよ!

 

と非を一切認めることなく開き直り、彼はそう締めくくった。

 

こんな人のところで働きたくないと思った。

 

仕事を早く辞めてしまえばよかったのだが、ビザも残り少なかったのでこれから新たな仕事を見つけることは難しく、仕方なくもう少し働き続けることにした。

 

なるべく仕事中は彼の目を見ないように、顔を合わせないようにして、みんなの前で泣いて恥を晒したことを思い出さないように過ごした。

 

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次々とスタッフは辞めていくし、ずっと働いているスタッフからもよく思われていなかったマネージャーなのだが、社長からは一目置かれる存在であった。

 

社長の考えとしては、このマネージャーは仕事の能力と語学が長けていて外国でビジネスをしていくには欠かせない存在なので、彼に付いてこられないやつは仕事を辞めても構わない、というスタンスだった。

 

なのでマネージャーが他店に配属が変更になるとか、クビにならないことはもちろん、社長が苦言を呈することもなかった。

 

人望の厚く、スタッフ育成が上手な人にマネージャーをして欲しいと思ったが、それは夢物語であった。

 

 

 

店で長く働くならば、就労ビザを出して長くこの国に滞在できるようにしてくれる、という店側の提案もあったが断った。

 

外国に長く住むことができるのは、私にとっては魅力的ではあったが、あのマネージャーのもとで働き続けるのは耐えられなかった。

 

HSPで人の感情に敏感で、怒られることにトラウマを感じている私には辛い職場だった。

 

6ヶ月勤務した後に日本へ帰国した。 

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト⑥ 〜パーティでの豹変と戸惑う私〜

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職場で不満を持ちつつもしばらく働き続け、年末になった。

 

私の働くレストランでは毎年クリスマスに、系列店合同でパーティーをすることになっていた。

 

参加費は社長持ちで、パートナーや家族も連れて来てもいいことになっていた。

 

私には連れがいなかったので、1人で参加することにした。

 

 

 

パーティー当日、日本人、中国人、韓国人、ミャンマー人、ドイツ人、インド人などいろんな国籍のスタッフやその家族が、計50人ほど集まった。

 

パーティー会場として使われた私の働く店は、座る席がないほど人でギュウギュウだった。

 

知らない人がたくさんいて落ち着かず、何だかソワソワした。

 

開始の時間になり、マイクを持って話し出したのはあのマネージャーだった。

 

おしゃれなスーツを着て、ニコニコしながら話し、時にはみんなを笑わせたりした。

 

彼の司会進行で社長が挨拶をしたり、ゲームをしたりとプログラムが進んで行く。

 

お酒を飲みながらワイワイと話したり、美味しいご飯をお腹いっぱい食べて、みんなパーティーを楽しんでいるようだった。

 

パーティーはとても盛り上がっていた。

 

 

 

一方私は心から楽しめずにいた。

 

いつも怒ってばかりのマネージャーが笑顔で司会をしていたり、スタッフ達と談笑している様子を見て違和感しか感じなかった。

 

まさか二重人格!?

 

普段と違いすぎて戸惑う。

 

社長やその家族の前なので、あえて明るく振る舞ったのかもしれないが・・・。

 

彼の冗談にみんな笑っていたが、私は笑えなかった。

 

あんなに笑顔でもいつまた怒りだすかわからないと思い、気が抜けなかったからだ。

 

どうしても楽観的になれなかった私は、こんな場でも気軽に彼に話しかけたり、目を見ることができなかった。

 

彼をあからさまに無視したわけではないが、できるだけ避けて、見て見ぬ振りをした。

 

鬱を感じさせるものをなるべく遠ざけたかった

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト⑤ 〜スタッフの入れ替わりが激しい店〜

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よくよくマネージャーを観察していると、彼が怒っているのは私たち新人ウエイトレスだけではなかった。

 

キッチンスタッフに対しても「キッチンが汚い。ちゃんと掃除しろ。」とか「こんな料理の盛り付けはダメだ。」とか。

 

彼はみんなに怒っていたのだ、2人を除いて・・・。 

 

さすがに彼も、長年店を支えてきた最年長60歳のシェフと、社長の息子である店長には何も言えなかったようだ。

 

 

 

マネージャーとその他のスタッフが大きな声で怒鳴りあうことも少なくなかった。

 

自分に関係なくても、他人の言い争いや怒られているところを見ると、自分のことのように心が痛かった

 

彼らの声を聞きたくないので、その場から離れて仕事をするようにしていた。

 

ある日の営業中に彼らがキッチンで言い合いをして、食事をしているお客までその声が聞こえたこともあった。

 

こんなことをしていては店の評判が下がってしまうと思わなかったのだろうか。

 

そんな様子を見ていたり、毎日のように怒られると、マネージャーに嫌気がさして仕事を辞める人が後を立たなかった。

 

キッチンスタッフ、皿洗いのスタッフ、シェフ、ウエイトレス・・・

 

また語学堪能で仕事のできる人でさえも、マネージャーの態度に耐えきれずに辞めていった。

 

スタッフは何事もはいはいと言ってマネージャーの言うように仕事をこなさないと、彼は気に入らないのだろう。

 

開店したばかりの店は、スタッフの入れ替わりやすい店となった。

 

今考えると私は意外と忍耐力があった方なのかもしれない。

 

 

 

働き出して5ヶ月ほど経った時、精神の限界も近づいていた

 

鬱になって調子が悪くなり、夢にまでマネージャーが出てくるようになった。

 

仕事に行くときは気が重かったし、「今日はマネージャーに怒られませんように。」と毎日願うようになっていた。

 

 

 

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト④ 〜毎日怒るマネージャー〜

 さらに彼は童顔な見た目とは裏腹にとても怒りっぽかった。

 

最初は私たちが新人だから、失敗をすることが多くて怒らせてしまったのかと思っていたのだが、いつになっても怒られ続けた

 

しばらくして、彼は大したことではないことに対しても怒っていることがわかった。

 

すぐ表情に出るし、感情を大きく表し、常に怒るのが彼のベースの性格ようにさえ思えた。 

 

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毎日開店前に高さ3メートルほどある大きなガラス張りの窓を掃除しているのだが、たまに拭き残しが見つかると、その度にすごく嫌な顔をしながら怒られた。

 

私たちは決してサボっていたわけでもなく、ちょっとした見落としだったのだが、それを大きなミスをしたかのように怒った

 

 

 

またある日は開店準備のため、ウエイトレスである私たちはテラス席の掃除とセッティングをしていた。

 

いつもやっている準備なので時間もかからずスムーズにできた。

 

開店間際になってマネージャーが出勤すると、私たちを見るなりすぐに怒り出す。

 

マネ「なんで外の椅子が汚いんだ!早く掃除して!」

 

「テラス席のテーブルや椅子はちゃんと掃除したのに。」と思ったが彼のいう椅子とは、入店できずに待っている人が座る、外に置いてあるベンチ椅子のことだった。

 

今まで一度もその椅子を掃除してと指示はなかったが、しっかりと怒られる。

 

「あの椅子が汚いから、掃除しておいてねー。」くらいの口調で言えば嫌な感じはしないのだが、彼にはそんな言い方はできない。

 

私たちは何も言い返しもせずに、すぐさま椅子の掃除に取り掛かった。

 

 

 

また別の日は、私がオーダーを取る際にお客に日本について聞かれたので少し長めに話していると、その場を離れた後に彼に怒られる。

 

マネ「なんでそんなに長く話してるんだ!そんなに話さなくていいんだよ。早く仕事に戻って!」

 

日本では店員とお客は最低限の話しかしないのが普通であるが、欧米ではお客とフレンドリーにちょっとした世間話をするのがサービスの一部であり、それが普通である。

 

その時店が混んでいるわけでもなかったし、5分ほどしか話していなかった。

 

良かれと思って、仕事に支障が出ない程度にフレンドリーに接客をしたつもりだったのだが、裏目に出てしまった。

 

海外で多国籍の同僚と働いているのに、なんだか日本にいるような堅苦しさを感じた。

 

そして、だんだん怒られることに耐えきれなくなっていく。

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト③ 〜細かい中国人マネージャー〜

働き出して2ヶ月ほど経ち、大体のメニューは覚えたし、要領も得てきた。

 

同僚とも仲良くなり、仕事の時間も少しずつ楽しくなってくる。

 

年齢や国を問わず、職場でのいい関係ができてきたと思った。

 

そんな中、唯一距離が狭まらなかったのはマネージャーだった。

 

彼は40歳くらいの中国人、語学が堪能でいくつかの店舗を統括していた。

 

見た感じは10歳ほど若く見える童顔で、笑うと少年のような可愛らしい顔だった。

 

だがそんな最初の印象はすぐに覆った。

  

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私の経験上、高級店を除いて海外の多くの店は、日本と比べれば細かいところまでサービスや掃除が行き届いていないように感じる。

 

ある国のハンバーガー店に行ったとき、店内の床がゴミだらけで放置されていたのを見た。

 

またある国では、アパレル店に入っても店員は挨拶もしないし、服を購入しても商品を畳まずにズボッと乱雑に袋に入れる。

 

またある国の空港の免税店では就業中にも関わらず、たくさんの店員がスマホをいじってお客がカウンターで待っていても気づいていなかった。

 

そして洋服店のカウンターでお客がいるのにも関わらず、店員がレジのあるカウンターで堂々と昼食をとっていた。

 

日本はチップを貰うことがないのにも関わらず、質の高い品質や接客、清潔さがあり、仕事に対して良くも悪くも厳しい国である。

 

なので日本人の私の感覚では、海外はざっくりとした接客と店づくりというイメージを持っていた。

 

 

 

私の働く店は低価格のレストランであるにも関わらず、マネージャーはいろんなことに対して厳しかった。

 

働いているときは携帯の所持は禁止。

 

接客の仕方はもちろん、髪型やアクセサリー、掃除やゴミの捨て方もうるさかった。

 

制服である(なんちゃって)着物の着方にも注意されたことがある。

 

日本人が見れば着物の裾が少し短すぎるなど思うところはあるかもしれないが、外国人のお客の誰が2、3センチの短さに気付くだろうか・・・。

 

絶対に足元まで目がいかないと思うのだが、彼は日本のレストランというコンセプトをできる限り再現したかったのだろう。

 

着物を着たこともないのに、中国人である彼がここまで見ているのはある意味すごいと思った。

 

こんな細かいことを言う中国人には出会ったことがなかった。

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト② 〜簡単にはいかないオーダー取り〜

 

やがてプレオープン期間が終わり、正式にレストランは営業を開始した。

 

私の働いていた日本食レストランは海外にいくつもの店舗も持つチェーン店だった。

 

店の売りは、低価格で種類豊富な日本食が食べられるということ。

 

お客側としては嬉しいことなのだが、働く側としては種類が豊富すぎることは負担だ。

 

日本人の私でも見たことないし、中身もよくわからない海外風の太巻きがたくさんあった。

 

全部のメニュー名を覚えるのは大変だし、使っている素材がそれほど変わらないような料理もあってややこしい。

 

 

 

基本的に日本人ではない人が来店するので、この料理は何が入っているかと聞かれることが多々ある。

 

私は日本で、餃子に何が入っているか店員に聞いたことがない。

 

豚肉か合挽き肉か、白菜かキャベツかなんて気にならないし、美味しかったらそれでいい。

 

しかし彼らにとっては異国の料理で、何が入っているか見当がつかない。

 

宗教的な理由で豚多肉を避けている人もいる。

 

曖昧な答えを言ってはいけないので、その度に私はシェフに確認しに行き、お客に説明した。

  

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さらに海外はアレルギーを持っている人も多く、どんな材料を使っているかと時々聞かれる。

 

甲殻類アレルギー、卵アレルギー、ナッツアレルギー、ごまアレルギー・・・

 

このような質問を受けるときは緊張する。

 

お客に万が一のことが起こってはいけないので、材料が分かっていたとしても必ずシェフやマネージャーに確認を取った。

 

一度団体客の中に海鮮アレルギーの人がいて、魚介類を使っていない料理はないかと聞かれてことがある。

 

ラーメンや肉料理もあったがキッチンは1つしかないし、まな板や包丁は洗ってはいるが本当に敏感な人だとそれでもアレルギーを起こすことがある。

 

「そういう人が、寿司をメインに扱う日本食レストランに来てはいけないよ。」と思ったが、そんなことはもちろん言えるわけがなく、必死で彼用のメニューを探し、シェフも最新の注意を払って料理を提供してくれた。

 

 

 

そして海外でのオーダーは日本よりも柔軟というのも大変だった。

 

アレルギーではなくても、材料の変更や指定した材料抜きで料理してくれと頼む人が結構多い。

 

客「ラーメンのチャーシューは抜いてね。」

 

客「カリフォルニアロールにマヨネーズ入ってる?マヨネーズ抜きで作って欲しい。」

 

客「この太巻きにマグロが使われてる?もし入っているならサーモンに変えて欲しい。」

 

注文がシンプルではなくなるので、このようなオーダーはミスをすることが少なくはなかった。

 

 

 

メニューを覚えるだけで精一杯なのに、こまかな材料までなかなか覚えられない。

 

アレンジのある注文だと何度も確認することが必要だし、失敗が怖い。

 

仕事を始めたばかりでいろんなことがうまくこなせず、不安を感じてしばらく軽いうつ状態だった。

 

ヨーロッパでの飲食店アルバイト① 〜多国籍の同僚と仕事スタート〜

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フランスから帰った後、流石に働かないと生活していけないと思い、アルバイトを探し始めた。

 

あんまりピンとくる求人はなかったが、とりあえず家から近い日本食レストランのウエイトレスの仕事に応募することにした。

 

 

 

面接のために店に向かう。

 

歩いてたったの5分で店に到着。

 

一面窓ガラスで店の中がよく見えるようになっている。

 

店に入ると、窓ガラスの効果で照明がとても明るい居酒屋という感じの内装で、席数は50席程度。

 

面接してくれたのは小柄な日本人男性のシェフだった。

 

職歴・語学力・勤務可能日数など聞かれる。

 

この国の言語は話せなかったが、日本語と英語さえ話せればいいと言う。

 

勤務日数も希望が通りそうだし、まかないで日本食が食べれるということで働くことに決めた。

 

 

 

勤務初日に制服を渡された。

 

ぱっと見は着物なのだが、誰でも簡単に着られるよう甚平のように上下が分かれている。

 

上下が分かれていても、その上からマジックテープで留められる帯を巻けば着物のように見える。

 

外国で日本スタイルの接客をしたいという社長の考えらしい。

 

日本でも和服なんてほとんど着たことがないのに、外国で(なんちゃって)着物を着て接客するとは思いもしなかった。

 

これからプレオープンをするということで、普通よりも価格を安くし、メニューも一部に限定して営業を始めた。

 

初めはウエイトレス業務は慣れなかったが、5種類程しかメニューがなかったので失敗もほとんどなかった。

 

お客も少なかったので、何かあってもすぐに対処することができた。

 

 

 

仕事に少し慣れてくると余裕もできて、同僚と話す機会が増えてくる。

 

少しずつ距離が狭まり、彼らのバックグラウンドや性格が見えてくる。

 

ウエイトレスは中国人、台湾人、韓国人。年も近く、みんないい人で語学も堪能だった。

 

シェフはほとんどが日本人。外国で日本人シェフとして何十年も働いてきた人、日本で何年か働いて最近渡航して来た人、未経験で最近シェフとして働き出した人、経験も年齢も幅広かった。

 

キッチンアシスタントは人懐っこいミャンマー人とハンガリー人。

 

そしてこれから私の悩みのタネとなるマネージャーは中国人だった。