よくよくマネージャーを観察していると、彼が怒っているのは私たち新人ウエイトレスだけではなかった。
キッチンスタッフに対しても「キッチンが汚い。ちゃんと掃除しろ。」とか「こんな料理の盛り付けはダメだ。」とか。
彼はみんなに怒っていたのだ、2人を除いて・・・。
さすがに彼も、長年店を支えてきた最年長60歳のシェフと、社長の息子である店長には何も言えなかったようだ。
マネージャーとその他のスタッフが大きな声で怒鳴りあうことも少なくなかった。
自分に関係なくても、他人の言い争いや怒られているところを見ると、自分のことのように心が痛かった。
彼らの声を聞きたくないので、その場から離れて仕事をするようにしていた。
ある日の営業中に彼らがキッチンで言い合いをして、食事をしているお客までその声が聞こえたこともあった。
こんなことをしていては店の評判が下がってしまうと思わなかったのだろうか。
そんな様子を見ていたり、毎日のように怒られると、マネージャーに嫌気がさして仕事を辞める人が後を立たなかった。
キッチンスタッフ、皿洗いのスタッフ、シェフ、ウエイトレス・・・
また語学堪能で仕事のできる人でさえも、マネージャーの態度に耐えきれずに辞めていった。
スタッフは何事もはいはいと言ってマネージャーの言うように仕事をこなさないと、彼は気に入らないのだろう。
開店したばかりの店は、スタッフの入れ替わりやすい店となった。
今考えると私は意外と忍耐力があった方なのかもしれない。
働き出して5ヶ月ほど経った時、精神の限界も近づいていた。
鬱になって調子が悪くなり、夢にまでマネージャーが出てくるようになった。
仕事に行くときは気が重かったし、「今日はマネージャーに怒られませんように。」と毎日願うようになっていた。