彼が元気になると、別の意味で問題があった。
というのは、めんどくさい恋する乙女のようだったからだ。
ある時は私に対して気持ちがあるかのように匂わせ、またある時は私の日本人の友人に対して好意があるようなことを言い、さらにまた別の日は韓国人の同僚が好きだと言いだす。
「はあ?何言ってるんだこの人?女の子なら誰でもいいのかな?」と思いながらも、彼はうつ病で繊細なところもあるので、傷つけるようなことは言えない。
私は彼のお気に入りだったことを知っていたので、変に気を持たせてはいけないと思い、彼と少し距離を置くようになっていた。
クリスマスパーティの時に同僚と写真を撮っていたのだが、それを見た彼が「何で俺と写真撮ってくれないの?俺のこと嫌いなんだね。」と周りに人にも聞こえるような声でグチグチ言い出した。
仕方なく2ショット写真を撮ると、彼は満面の笑みを浮かべ満足したようだった。
こんなことや長文の重い内容のメールのめんどくささに耐えられずに、私が日本へ帰国した後は彼と連絡を取るのをやめた。
その後日本人の友人に聞いた話なのだが、彼は「韓国人の同僚と付き合うことになった。」と友人に話していたらしい。
私はその子とずっと一緒にウエイトレスとして働いていたので、よく知っていた。
私「えー!?ちょっと待って。韓国人の子は英語話せたけど、彼は英語を話せなかったよね?2人ともまともに会話できてなかったのに、どうやって会話してるの?」
友人「翻訳アプリで会話しているらしいよ。シェフが彼女の誕生日プレゼントで高価なアクセサリーあげてた。でもそれからすぐその子のビザが切れて韓国に帰って遠距離になってしまったから、彼は結婚することを考えたんだって。最近彼は転職して現在マレーシアにいるんだけど、職場の人にいずれ婚約者が来て同棲する予定と伝えてたみたい。そして同棲する段取りを組んで彼女にマレーシア行きの航空券を送ろうとしたら、連絡取れなくなって自然消滅したらしい。」
韓国人の子のために言っておくがその子は本当に優しい良い子で、その気があるフリをして高価なプレゼントを買わせて高飛びするような腹黒い子ではない。
私と友人の解釈はこうだ。
韓国人の子はみんなに対してとても優しい子だったので、シェフが両想いなのではないかと勘違いしてしまった。
シェフは彼女のことが一方的に好きで、メールをしたり誕生日プレゼントをあげた。
でもその子はシェフと友人の1人としてしか見ていなかった。
お互い簡単な会話をすることしかできず翻訳アプリに頼ったが、たまに訳し方が変だったりするので、実はうまく意思疎通ができてなかった。
それでなぜかシェフの気持ちが盛り上がって、自分達は付き合ってるし婚約もしたと思った。
さすがに優しさの塊のような子も付き合いきれなくなって、音信不通になったと言ったところだろう。
私と友人は2人のことをよく知っていたので、このストーリーが一番しっくりくる。
どうしたらそんな都合のいい解釈ができるのか不思議だ。
思い込みが激しいにもほどがある。
彼が以前にうつ病と診断されたことがあると聞いていたので、鬱が辛くて恋愛依存をしているのかもしれないと思った。
私の経験上、一時的に恋愛が幸福感を与えてくれるが、それがうまくいかないと他にも大きなダメージを受ける。
私は力になることはできなかったが、彼がちゃんと治療やカウンセリングを受けて、この恋愛に対するアグレッシブさやポジティブさを別のところにも向けるようになって欲しいと願う。