働き出して2ヶ月ほど経ち、大体のメニューは覚えたし、要領も得てきた。
同僚とも仲良くなり、仕事の時間も少しずつ楽しくなってくる。
年齢や国を問わず、職場でのいい関係ができてきたと思った。
そんな中、唯一距離が狭まらなかったのはマネージャーだった。
彼は40歳くらいの中国人、語学が堪能でいくつかの店舗を統括していた。
見た感じは10歳ほど若く見える童顔で、笑うと少年のような可愛らしい顔だった。
だがそんな最初の印象はすぐに覆った。
私の経験上、高級店を除いて海外の多くの店は、日本と比べれば細かいところまでサービスや掃除が行き届いていないように感じる。
ある国のハンバーガー店に行ったとき、店内の床がゴミだらけで放置されていたのを見た。
またある国では、アパレル店に入っても店員は挨拶もしないし、服を購入しても商品を畳まずにズボッと乱雑に袋に入れる。
またある国の空港の免税店では就業中にも関わらず、たくさんの店員がスマホをいじってお客がカウンターで待っていても気づいていなかった。
そして洋服店のカウンターでお客がいるのにも関わらず、店員がレジのあるカウンターで堂々と昼食をとっていた。
日本はチップを貰うことがないのにも関わらず、質の高い品質や接客、清潔さがあり、仕事に対して良くも悪くも厳しい国である。
なので日本人の私の感覚では、海外はざっくりとした接客と店づくりというイメージを持っていた。
私の働く店は低価格のレストランであるにも関わらず、マネージャーはいろんなことに対して厳しかった。
働いているときは携帯の所持は禁止。
接客の仕方はもちろん、髪型やアクセサリー、掃除やゴミの捨て方もうるさかった。
制服である(なんちゃって)着物の着方にも注意されたことがある。
日本人が見れば着物の裾が少し短すぎるなど思うところはあるかもしれないが、外国人のお客の誰が2、3センチの短さに気付くだろうか・・・。
絶対に足元まで目がいかないと思うのだが、彼は日本のレストランというコンセプトをできる限り再現したかったのだろう。
着物を着たこともないのに、中国人である彼がここまで見ているのはある意味すごいと思った。
こんな細かいことを言う中国人には出会ったことがなかった。