休学している時、引越しを考えていた。どれくらい休学するかもわからないし、もう少し安い部屋に住みたかった。
そして一階に住んでいた私は、ビルの管理人がよくベランダをウロウロするのが気に障って仕方がなかった。もちろん庭の整備のためだが、なんだか嫌で常にカーテンを閉めていた。
医者には日光に当たるのは鬱にいいことだと言われたし、自分的にも日光は気分をよくしてくれる気がした。
ということで、家賃が安くて、2階以上の日の当たる部屋を探すことに。
インターネットで物件を探し、全国にチェーン店のある不動産屋に内見を申し込んだ。
当日3軒ほど部屋を見せてもらった後、不動産屋の事務所に戻ってきた。
部屋を決めるには親と相談しなければいけない。当時学校も行けず、働くこともできなかった私は親に頼るしかなかった。
内見した物件資料をもらった後に、
私「少し検討させてください。」
スタッフ「この物件は人気だから、すぐになくなりますよ。」
私「すぐには決めれないので親と相談させてください。」
スタッフ「でも仮押さえしておかないと、他のお客さんに取られちゃいますよ。」
部屋を仮押さえして、手付金の支払いと用紙の記入をさせようとする。後から知ったのだが、賃貸の場合の仮押さえと=入居申し込みのことで、入居審査の間は物件が仮押さえられるという意味らしい。
何度断っても、どうしても契約に結びつけたいがために食い下がるスタッフ。次第にスタッフの表情も曇ってきた。不機嫌そうだ。
その表情を見て、私はもう耐えられなくなった。客がこんなに断ってるのに一歩も引かない。自分が悪いことをして責められているような気になってきた。
涙が溢れて止まらなくなる。
歯を食いしばって我慢していたが、やっとのことで言葉を絞り出す。
私「もういいです。」
それだけ言って店を出た。高圧的で客の話を聞かないスタッフに「こんなセールスはやめてください。」「何度も言ってるように今は決められません。」など反論ができる余裕はなかった。ただこの場から離れたい。
不動産屋には自転車で来ていた。悲しみと怒りをどうしていいかわからず、停めてあった自分の自転車を突き飛ばす。同時に物を傷つけたという罪悪感も感じる。何をしてもいい気分にはならない。
その日はなかなか泣き止むことはできなかった。
この頃から、自分は人の感情を異常なくらい受け取ってしまうようになる。
自分は全く関係ないのに、怒ってる人や不機嫌な人を見ると、自分が怒られているように感じてしまう。