いつもの時間。
いつものアルバイト。
いつもの同僚A。
でも今日はなんだか空気が違う。
いつも忙しいバイト先の店なのだが、その日は珍しくお客さんが少なかった。
『今日は忙しくて焦ることもなさそうだし、のんびり仕事ができそう。ラッキー。』
そんな風に呑気に考えていた。
仕事を開始して30分後、違和感を感じた。
Aがいつもよりも静かで、口数も少ない。
みんなに優しいAは仕事がよくできる。
いつもはおしゃべりで、よく面白い話もしてくれる。
頼りがいがあるし、忙しくても怒らないし、一緒に働いていて楽なタイプだ。
だが、今日のAはほとんど黙っている。
以前『たまに体調不良になると、あまり話さなくなるんだよね。』とAから聞いていた。
私もそんな時は人と話したくなくなるので、静かに仕事をしていた。
お客の来店もなく、気持ちが悪いほど店内は静まり返っている。
しかし、仕事のことでAと話さなくてはいけないことが出てくる。
私「ねー、これってもう在庫ないのかな?」
同僚A「xxxxxx・・・。」
声が小さくて聞き取れない。
私「え?なんて言ったの?」
同僚A「・・・ないよ・・・。」
ぶっきらぼうに、なんとか聞き取れる大きさの声が聞こえた。
その後も何度かそんなやりとりが続く。
Aはずっとブスッとした表情のまま、営業終了まで数時間働いた。
勤務が終了し、帰宅時間になってやっといつもの話しやすいAに戻った。
私はホッとした。
Aの機嫌が悪かった理由はあえて聞かなかった。
そのことに触れると、また空気が悪くなりそうな気がしたからだ。
私は勤務中、居心地が悪くてしょうがなかった。
Aの態度を見ていると、悪い思考が頭の中をぐるぐると巡った。
- なんでAは機嫌が悪いんだろう?
- 体調不良のせいではなくて、私のことが嫌いだから無口になっているのかもしれない。
- 返事が聞こえなくて、何度も聞き返してAをイライラさせてしまったかな?
- 私がテキパキと働けないから、気分を悪くさせているのかもしれない。
特に迷惑をかけたわけでもないのに、どうしてだか自責の念に駆られる。
常に空気がピリついていて、初めてAのことが怖いと思った。
Aが怒ったり、私に文句を言ったわけでもないのだが、HSPの私はこんな微妙な空気の変化に敏感になってしまった。