ある朝、いつも通りに出勤。
私は別の部屋で仕込みをして、同僚は入り口近くで開店準備をしていた。
30分ほどして、同僚がバタバタと焦っている様子が目に入った。
同僚「財布盗まれた!!」
私「え????どうやって?」
話を聞くと、同僚が別の部屋へ行っている数分の間に、泥棒に入られて財布を盗まれたというのだ。
店の入口はいつも扉を閉めているのだが、鍵がかかっていない。
壁を隔てて他の同僚もいたのに、彼らも気づかなかったというのだ。
開店準備どころではなくなってしまった。
すぐに防犯カメラの映像確認し、警察に連絡する。
同僚は警察署に行っていて人が足りないので、急遽店を1時間ほど閉めることに。
同僚が2時間後に帰ってきたが、結局財布は見つからなかった。
店はその後開店したが、ずっと重苦しい雰囲気が漂った。
勤務が終了して自宅に帰るが、その事件のことがずっと頭の中を巡り巡っている。
同僚が財布をテーブルの上に置いて、扉の鍵がかかっていないのにその場所を離れていたことが原因ではある。
しかし、『私が最後に出勤し、ちゃんと鍵をかけなかったのが悪いんだ。私のせいでこんなことになったのかもしれない。』そう思い出すと、自責の念で頭がいっぱいいっぱいになってしまった。
心がぎゅっと締め付けられる感じで、息も浅くなる。
財布を弁償しようかなとも考えたが、同僚の性格からして受け取ってくれそうにない。
『今度、同僚にどんな顔をして会えばいいんだろう・・・。』
数日間、このことでとても苦しかった。
次に同僚に会った時に、ちゃんと謝ろうと決めた。
誤ってどうにかなるものではないのだが、少しでも気持ちを伝えたかった。
数日後、職場にその同僚が出勤していた。
私「こないだの財布の件だけど・・・鍵をちゃんとかけなかった私にも責任がある。本当にごめんなさい!」
少し声が震えながら謝った。
同僚「あれは私がその場を離れちゃったから悪いのよ。あなたのせいじゃないよ、他の同僚も鍵をかけてない時もあったし。実は前にも知らない人が勝手に店に入ってきたことがあったんだよね。これからはみんなで鍵閉めを徹底して気をつけよう。」
同僚は気を遣ってか、それほど気にしてない素振りを見せた。
でも私は申し訳ない気持ちを引きずって、その後数日間鬱になって、自分自身を責め続けた。