受付業務の派遣が終わり、私は(たぶん)軽躁状態だった。
3週間の旅行でたくさんお金を使ってしまい、罪悪感を感じたのでまたすぐに仕事を探すことにした。
あるコールセンターの求人を見つけた。仕事内容は興味が持てなかったが、1ヶ月ほどの短期で時給が良かったので働くことにした。
勤務初日にそのコールセンターに向かう。
高層ビルに広々としたオフィスを構え、100人以上の従業員が働いていた。
このような場所に来たことがないので緊張する。
私を含めて10人ほどのアルバイトが研修を受けに来ていた。
簡単にいうと、企業へ営業の電話をする発信業務である。
何枚もの資料が配られ、それを見ながら仕事内容の説明をされる。
会話の流れ、営業の決まり文句、問題対処などマニュアルがたくさんあった。
そしてコールセンターの業務は言葉使いが重要である。
資料には間違えやすい敬語のリストが作られていた。
例えば、お客に相づちをうつために「そうなんですか〜。」「そうなんですね。」と言ってはいけない。
「さようでございますか。」
と言わなければいけないと研修をしている社員に言われ、笑ってしまいそうになった。
私は今までの人生でこの言葉を使っている人に出会ったことがないからだ。
研修を終えて、そのあとは新人同士でぎこちのないロールプレイングをする。
お昼休みのあとは、パソコンで営業先のリストを見ながら実際に電話をかける。
この時点では、「世の中にはこんな仕事もあるんだな。」くらいにしか思っていなかった。