カフェで働き始めてから数週間。
週5日、1日7時間半の勤務に少しずつ慣れつつあった。
基本的にレジとサンドイッチなどの軽食作りをした。
店は大きくはないが、忙しい時と暇な時の波があった。
朝は7〜9時、昼は11時〜13時にお客がたくさん来た。
基本的にスタッフは2人勤務で、1人はレジと軽食作り、もう1人はコーヒー作りをした。
暇な時はいいのだが、混み合う時間はかなりバタバタした。
何と言ってもプレッシャーなのは、お客が長い列を作ることだった。
たくさんのお客を見ると、焦る気持ちが強くて、ぎゅっと心臓を縮められるような気持ちさえした。
急ぐとミスも出てくる。
ある日、忙しい時間帯にドリップコーヒーを切らしてしまった。
また作ればいいのだが、コーヒータンクをいっぱいにするには、15分ほど時間がかかる。
「タンクをいっぱいにするまで15分間コーヒーの抽出を待たなくても、少し溜まったらそれを提供すればいいのではないか。」
とコーヒー知識のない私は思った。
しかしコーヒー通のスタッフからは「それはやっちゃダメ!」と怒られた。
なぜなら、最初に出始めたコーヒーは豆の味がとても濃くて、美味しくない。
決まられた量の豆と、決められた量のお湯で抽出しないと味が変わるらしい。
いつもインスタントコーヒーばかり飲んでいる私には全くの違う世界だった。
ドリップコーヒーの量に気をつけながら接客をするよう心がけるようになった。
量は外から見て一目でわかるものではなく、蓋を開けてタンクの中をのぞいたり、タンクを持って揺らして残り量を確認しなければいけない。
注意はしていたが、急いでいるとドリップコーヒーが少なくなっていることに気づかずに、切らしてしまうことが時々あった。
忙しいとオーダー取りで忙しくて、なかなかそこまで気が回らなかった。
忙しいと何かしらミスをする。
ミスしたら、一気に鬱へと引きずり込まれる。
・なんでまた失敗したんだろう
・同僚も怒ってるだろうな
・同僚をがっかりさせてしまったな
・お客さん不機嫌だったな
・コーヒー提供に時間がかかり、待たせてしまったお客に合わせる顔がない
余裕なんてこれっぽっちもなかった。
ほぼ毎日不安だった。
私には、落ち着き・冷静さ・気配り・正しい判断力が欠けている。