フルタイムで1日8時間・週5日を希望していたが、まずはカフェの仕事に慣れるために最初の1週間は4時間だけの勤務がスタートした。
緊張の初日。
その日、韓国系カナダ人Sと日本人Aがスタッフとして働いていた。
日本人同士の方が説明がわかりやすいからとの理由で、Aが私の教育係となった。
仕事内容としては、レジ・軽食の調理・バリスタを全部をできるようにしないといけない。
まずはレジ打ちから習う。
キャッシュを入れるところは一般的なものだったが、入力はアイパットを使うという、なんだか今時のレジだった。
他にも小さなアイパットのようのものが2台あって、それはウーバーイーツなどのテイクアウトの注文を受けるものだ。
入力方法を教えてもらうが、全て英語表示で、訳がわからない。
ましてやまだどんなメニューがあるかもわからないから、ちんぷんかんぷんだ。
しばらく教えてもらった後に、すぐに実践開始という感じで、カウンターに来たお客のオーダーをとることになった。
心の準備がまだできていない。
あたふたするが、お客は待ってくれない。
カナダ人のお客がベラベラと話しているが、緊張とカフェで使う用語に慣れていないこともあって、全く頭に入ってこない。
そして私はあがり症なので、不安がすぐに顔に出てしまう。
そうしているうちに、お客さんの列ができてしまい、私の使えない接客を見かねたAがレジ係を代わってくれた。
初日はいろんなことを教えてもらったが、その場にいるのが精一杯で、他のスタッフが働く姿を見ているしかなかった。
「あんなことできる気がしない。しかも覚えることがたくさんありすぎる。」
言うまでもなく、小心者の私は不安に押しつぶされて、その日は絶望を感じながら眠った。
本当はカナダで新しい仕事ができると喜ぶべきなのに、そんな風に思える心の余裕は全くなかった。