お客とウエイターの機嫌の他にも悩んでいたことがあった。
電話対応だ。
たまにお客や業者から電話がかかってくるので、席の予約を受けたり、要件を聞かなければいけない。
私は電話が嫌いだ。
顔もわからない相手に電話をすることに抵抗がある。
こちらから問い合わせの電話をするのならまだいいのだが、働き出したばかりでどんな内容かもわからない電話を受けるのが苦手だし、焦って混乱してしまい内容を聞いても頭で処理できなくなる。
そして英語は英語でも、癖のある英語は聞き取りが難しい。
中国人や韓国人の話す英語はまだわかりやすいが、インド英語、スコットランド英語などは特に難しい。
なので電話が鳴るたびにドキッとした。
英語が堪能なスタッフが周りにいればお願いできるのだが、近くに誰もいない時は電話を取る前からパニックになった。
仕方なく電話に出なければいけない時は、うまく要件を聞き取れず、「少々お待ちください。」とだけ言って、すぐに他のスタッフを探し回った。
スタッフからは「誰?要件は?」と聞かれるのだが、私はいつも答えられなかった。
まともに電話も取れない自分を責めた。
なんとか要件を聞けて、予約を受けることができたが、そのあと決まって不安に襲われる。
「本当に私の聞き取った予約日と時間は合っていたのか?」
「もし私がミスして、お客が来た時にテーブルが予約できていなかったらどうしよう。」
自分を信じることができない。
その心配はいつも長く引きずり、数日間も考えることもある。