農家でのアルバイトは結構気に入っていた。
朝5時に起きてメイクをせずに日焼け止めだけ塗り、毎日パジャマのような格好で職場に行くので、出勤の準備が楽。
仕事は6時から14時までで、帰宅後しても午後の時間はたっぷりある。
1日を有意義に過ごせている気がした。
フルーツの収穫は重労働だったが、ラジオや好きな音楽を聴きながら自分のペースで仕事ができた。
オーストラリアの労働賃金は高く、難しい仕事ではないのに時給は$22(≒¥1800)も貰える。
何よりも人に会わずに黙々と作業できることが自分には向いていたのだと思う。
この時の職場の同僚は多少入れ替わりがあり、オーナーであるオーストラリア人夫婦、フランス人2人、日本人3人になっていた。
その中でもフランス人の19歳の女の子は、今まで出会ったことのないようなずば抜けた子だった。
元気とパワーが人並みはずれて溢れている、私と対照的な存在だった。
人見知りという言葉を知らないだろうと思ってしまうほど、誰にでも構わず話しかける。
毎日テンションが高く、人を笑わせたりエネルギッシュな話し方をする。
どんな事でも大げさに話し、喜怒哀楽も激しく、飛んだり跳ねたりと動きもとても大きい。
彼女との話は楽しいのだが、20分もすればもう疲れてしまう。
ほとんどは彼女の話を聞くだけなのだが、それだけでこちらもかなりのエネルギーを使ってしまう。
日本人のように包み隠すことなく考えをはっきりと言うので、彼女に悪気はないのだがグサっと胸に刺さるようなことも言われた。
HSPで敏感な私は、彼女に否定されると辛かった。
疲れているときは彼女に近づかないようにしていた。
彼女と私のエネルギー量が違いすぎた。
いつもどこからそんな元気が湧いてくるのか不思議でしょうがなかった。
元気がありすぎて、夜なかなか眠れずに困っていると聞いた時には驚いた。
鬱を感じやすい私は彼女のエネルギッシュな遺伝子を少し分けて欲しいとさえ思った。
そんな彼女だがユニークで純粋で情熱的な性格だったので、いつもみんなに可愛がられる存在だった。
そして私にもいつも人懐っこく声をかけてくれたし、ポジティブな考えをシェアしてくれたし、へこんでいると全力で励ましてくれた。
結局何ヶ月も一緒に過ごすと私と彼女は仲良くなり、なんだか年の離れた妹ができたようだった。
エネルギーが有り余りすぎて手を焼くことも多々あったが、社交的でいつも元気でいられる彼女が本当に羨ましかったし大好きだった。