女性社員が去った後の職場の雰囲気は良かった。
同僚の年齢層は私よりも高かったが、優しくていい人が多く、楽しく仕事ができた。
受付には私の他にもう1人、40代の華奢な女性派遣社員がいた。
今までいくつもの派遣会社を渡り歩き、いろんな場所で働いた経験があるという。
仕事をテキパキとこなし、なにか問題があっても動じず焦らず、しっかりした対応ができる。
あまりにも仕事ができるので、まるでこの職場で何年も働いてきたかのようだった。
以前にこう言われたことがある。
女性派遣社員「同じ仕事をしても派遣はアルバイトよりもいい給与をもらってるのよ。もらっているお金以上の働きをしないといけないの。暇な時もぼーっとしてないで自分から進んで仕事を探さなきゃ。」
まるで派遣の鏡のような人だ。なぜこんな人がずっと派遣社員をしているのか不思議に思った。
急にキレ出す女性社員がいた頃も、その派遣社員は私の話を聞いてくれたし、「あんなの気にしなくていいのよ。」と励ましてくれた。
私の知らない面白い話もしてくれる。
私にはその派遣社員は姉のような存在になった。
しばらくして職場はお客でにぎわうようになり、受付業務は忙しくなった。
始めの頃のようにのんびりとゆっくり仕事をしていたのでは追いつかない。
手際よく効率的にこなしていかないと仕事が回らなくなってきた。
まだまだ慣れないことも多く、私は付いていくのに必死だった。
女性派遣社員は私よりも少し早く入社しているし、仕事の経験値も高いのでうまく仕事をこなしている。
次第に女性派遣社員から私への注意と指導が厳しくなる。
社員もその場にいて、質問があると答えてくれたり助けてくれるのだが、口を出すことほとんどなかった。
なんだか女性派遣社員が、何十年も務めているお局社員のように見えてくる。
もし仮に社員だったとしたら納得いくのだが、派遣社員が派遣社員にいつも指導するというのはなんだか変な感じがする。
確かにキレる社員とは大違いで言ってることは正しいし、接客の指導をしてくれているし、派遣として働く心得を私に教えてくれているのだろう。
仕事熱心でいい人だし言っていることもわかるのだが・・・
お客がいっぱいで仕事が忙しく、鬱ぎみになっている私にはそれをプラスに捉えることができなかった。
仕事をこなすだけで精一杯なのに、それに加えて女性社員のいうことを聞くことはキャパオーバーだった。
女性派遣社員が言っていることは正しいとわかっているのだが、言われたことを100%こなさないといけない義務を強く感じる私には辛かった。
毎日言われたことを完璧にこなすことができず、プレッシャーや罪悪感を感じるようになった。
- 今日も〇〇できなかった。
- 失敗してしまった・・・。
- 失礼な対応をしてしまったかもしれない。
- また失敗してしまうのが怖い。
こんなことがずっと頭の中をめぐる。
鬱の時には何事もマイナスに捉えてしまうし、人の意見を素直に受け止められなかった。