卒業研究も終わりに近づき大学卒業が見えてきた頃、就職活動を除いては順調にいっていた。
そして大学卒業数ヶ月前に、新しい彼氏もできた。
当時の彼氏はこれまでにないくらいの理想の彼氏だった。
高身長、イケメン、優しい、自慢したくなるような完璧な彼氏。
彼はワーキングホリデーで日本に滞在している外国人で、日本語を勉強していた。
私も外国語を勉強していたので、お互いに言語を教え合っていた。
彼は日本という外国で暮らしていくために、3つのバイトを掛け持ちしていた。
①飲食店のウエイター
私も実際に食べに行ったことがあり、彼も私がお店に来るのはウエルカムだった。
飲食店のランチのアルバイトの後に、バーで働いていた。
③モデル
彼はアジアと西洋の血が混ざっていて、高身長だったので、週末にモデルの仕事をしていた。
一方私は大学卒業後、就職活動は怖くてできないし、やっと決まったと思ったアルバイトもオーナーの給与未払いで完全にやる気を失っていた。
彼と付き合ったばかりの頃は幸せすぎる日々だったが、それでもしだいに鬱の波は押し寄せてくる。
私が不満に思ったことは・・・
- 彼のアルバイトが忙しくて、週に1日しか会えない
- 毎日あまりメールできない
- 彼の写真を撮らせてくれない
- モデルのアルバイトについて教えてくれない
もっと会いたいし連絡も取りたいと話したが、外国で暮らしていくことは楽ではないし、バイトが忙しい彼に無理は言えなかった。
彼はモデルをしているのにも関わらず、自分の顔が好きではないと言って、頑なに写真を撮らせてくれなかった。たまには思い出の2ショット写真を撮りたかった。
どのブランドのどの会社のモデルをしているのか一切教えてくれなかった。モデルをしているならばどこかに写真が掲載されているはずだが、見つけることができなかった。
私はアルバイトしたくても意欲が出ずに家にこもりきりだったので、不安がどんどん膨れ上がっていくばかり。
本当は私以外にも彼女がいるのではないか?だから、あまり会ってくれないんだ。
躁鬱の私にこんな彼氏はもったいないよね。
だんだん考え方が投げやりになってくる。
ある日ふと、彼に内緒で家まで行ってみようと考えた。
なぜなら、彼の家に行ったことがなかったからだ。男友達と同居しているらしく、一度も家に招かれたことはなかった。
こっそり後をつければ、仕事なのか別の彼女に会っているのか分かるはずだ。
それは日曜日、彼曰くモデルの仕事のある日。
以前に日本語が流暢ではない彼に代わり、オンラインショッピングをしてあげたことがあったので、彼の住所は知っている。
降りたことのない彼の家の最寄り駅で降りる。
着たことのないような服を着て、サングラスをかけ変装してみた。この時期のサングラスはちょっと不自然だったが。
彼の家の近くまで緊張しながら歩く。
駅に行くならたぶんここの道を歩くと思うんだけど・・・
いた!!!
気が付いた時には、目の前から彼がこっちに向かって歩いてきている。
息が止まりそうになるが、ここで引き返したら怪しまれると思い、まっすぐ前を向いて歩き、何事もないように彼の横を通り過ぎる。
こんなにドキドキしたのは初めてだ。
しばらく歩き、適当に角を曲がる。
本当は彼がどこに向かうか知りたかったので後をつけたかったが、思いがけず真正面から彼とすれ違ってビビってしまった。
テレビで見る探偵のようにはいかない。
途中で彼が引き返したら困ると思い、急いでタクシーを拾って自宅へ帰る。
落ち着きを取り戻すと、自分でしたことにとても驚いた。
これじゃあ、ストーカーじゃん!!!
明らかに普段しないようのことをしていた。
鬱状態で思い詰めると自分でも考えてもみないことをしてしまう。
こんなことをしても何の意味もないじゃないか。
自分にゾッとする。
今まで不安で鬱だったのが、急に躁転して、また鬱に戻った感じだった。
その1ヶ月後、彼がお金にルーズだったり、私の偏った文化の考え方により別れてしまった。
彼の後をついて行った日のことに関しては何も言われなかった。
例え彼が嘘をついていなかったとしても、当時の私の精神状態だと不安からくる鬱は避けられなかったと思う。
それ以来、何人か彼氏はできて不安に思ったり鬱状態になったが、このようなことは二度としなかった。
あんなことをしても鬱は晴れないとわかったからだ。
面白いことに、鬱状態以外の通常時の私は割とサバサバした性格だ。
彼にいくら聞いても仕事のことを教えてもらえなかったり、不安にさせられるのならば、そんな信用できない彼と別れればいい。安心させてくれたり、病気に理解のある彼を探せばいい。
と思ってしまう。