私が通った大学は、少人数クラスが多く、出席日数に厳しかった。教授が生徒の顔をしっかり見て、出席簿にチェックを入れていく。生徒の顔と名前を覚えている先生がほとんどであった。生徒数の多い、いわゆるマンモス校へ通う友人が、
『代返頼んで授業サボっちゃった。』
『学生証を友達に渡して、出席したことにしてもらった。』
など、替え玉出席の話をたまに聞いていたが、そんなことができるはずもなく、私の出席率は悪くなる一方になっていた。課題を提出すれば、なんとかなる問題ではなかった。授業は全て終了はしていなかったが、いくつか単位を落とすことは確実となっていた。
私は成績のことが心配でならなかった。この時期、私は大学三年生。いくつか単位を落としても挽回ができるほど、ある程度の単位は取っていた。
だが、この状況が人生最大の汚点のように感じていた。なぜならば私は、不可を取ってしまうからだ。
「成績は優でないといけない。」
私の大学では優・良・可・不可の四段階で成績をつけていた。今までの成績は優が8割ほど、良が2割。可・不可は取ったことがなかった。
「通い始めた授業は絶対に優を取りたい。」
「2割の良の成績は意味がない。だって優ではないのだから。」
中には、私の成績をまあまあ良い方ではないかと考えてくれる人もいるかも知れないが、優以外の評価が混じった私の成績簿は許せるものではなかった。不可などもってのほかだ。
これから先、数え切れない不可の数を成績簿で見ることになる。